厚生局による新規個別指導とは?準備と対策の基本 元厚生局職員が解説

こんにちは
元厚生局職員の鈴木です。(メディカルオネスト 代表)
新規個別指導に備えて、どのように準備を進めれば良いか、不安を抱えているクリニックの院長先生や事務長の皆様も多いことでしょう。
本記事では、厚生局による新規個別指導の基本的な準備と対策について、具体的なアドバイスを提供します。
特に、カルテ記載の重要性とその対策に焦点を当てて解説していきます。

  1. 新規個別指導の成否を決めるカルテ記載

新規個別指導において、最も重要な要素は何か?それは、間違いなくカルテの記載内容です。個別指導の目的は、クリニックが適切な保険診療を行い、その内容がカルテに記録されているかどうかを確認することです。
したがって、カルテの記載が新規個別指導を成功に導くかどうかの鍵となります。

しかし、日々の忙しい診療の中で、カルテ記載を詳細に行うことが難しいのも事実です。
そこで、指導に備えてどのようにカルテを充実化させるかが重要な対策となります。
単なる診療の流れを記録するだけではなく、診療の内容を的確に反映させることで、厚生局の指導において良い評価を得ることができます。

  1. 日々のカルテ記載の改善は難しい?指導直前が勝負

「カルテの記載を充実化させるべき」と言われても、日々の診療業務に追われている中では、これを完璧に実行するのは現実的に難しいことも多いでしょう。
そのため、実際に新規個別指導が通知された段階で、どのようにカルテの見直しを行うかが勝負となります。

通常、新規個別指導の1週間前に、カルテを提出する10人分の患者リストが届きます。
このリストが手元に届いた時点から、どのようにカルテを見直し、適切な記載を加えるかが非常に重要です。

しかし、ここで注意しなければならないのは、単にカルテを追加で記載するだけではいけないということです。
カルテの内容を修正・補足することが許される範囲があります。
不適切な追記は「改竄」と見なされるリスクもあります。

  1. カルテの「追記」と「改竄」の違い

ここで、多くの先生方が抱える疑問の一つに「カルテの追記は改竄にあたらないか?」というものがあります。
これについては、法的な整理とロジックの理解が必要です。

カルテの追記や補足は、新規個別指導の直前に許される範囲内で行うことが可能です。
ただし、その際には以下のポイントに留意する必要があります。

  • 診療当時の記憶をもとにした正確な追記: 追記は診療行為が実際に行われた内容を正確に補足することを目的とします。
    後から「診療内容を変更する」ことは許されませんが、記録を補うために記載を加えることは問題ありません。
  • 追記を行う際の日付記載: 記録の追記や修正を行った際には、追記・修正を行った日付を必ず記載し、いつ追加が行われたかを明示する必要があります。

このように、カルテの追記は決して「改竄」ではなく、診療内容の適切な記録のための補足行為であることを理解し、適切に行うことが求められます。

  1. どのようにカルテを豊富化させるか?

では具体的に、どのようにカルテを豊富化(充実化)させれば良いのかを考えてみましょう。カルテ記載において重要なポイントは、以下のような要素です。

  • 患者の主訴(S): 患者の訴える症状をそのままの言葉で記載することが大切です。患者の言葉が診療の出発点となるため、曖昧な記載を避け、詳細に記録しましょう。
  • 診療所見(O): 診察結果や検査データなど、客観的な事実を明確に記載します。ここで不明確な記載があると、適正な診療が行われていないと判断される可能性があります。
  • 診断・評価(A): 患者の症状や所見から導かれる診断を的確に記録することが重要です。
    出来たら付与した傷病名をシッカリと記載しましょう。
    傷病名を記載する際には、レセプトに記載される傷病名と同じものとすることが重要です。
  • 治療計画(P): 診療に基づく処方や治療計画を明示的に記載します。単に「処方do」と書くだけではなく、具体的な治療目的や計画の理由を説明することが、カルテの充実化につながります。

これらのポイントに基づき、SOAP形式でカルテを充実化させることが、新規個別指導の成功に繋がる大きな要因となります。

  1. 厚生局による新規個別指導の準備と対策

新規個別指導を無事に乗り切るためには、カルテ記載だけでなく、クリニック全体としての対応が重要です。
スタッフとの協力体制を整え、カルテ記載のルールや方針を共有しておくことが指導当日の成功に繋がります。

さらに、外部の専門家のサポートを受けることも一つの有効な手段です。
カルテ記載や新規個別指導に関する適切なアドバイスを受け、第三者の視点で準備を進めることで、不安要素を減らし、スムーズに指導を通過できるようになるでしょう。

  1. 最後に

厚生局による新規個別指導では、カルテ記載の充実化と適切な対応が重要な成功要因となります。
カルテの追記や修正についての法的な整理を理解し、適切に対策を進めることで、指導を無事に乗り越えることができます。

もし、新規個別指導に関して不安や疑問がある場合、または具体的なカルテ記載や準備方法についてアドバイスが必要な場合は、ぜひご相談ください。
私は元厚生局職員として、数多くのクリニックの個別指導をサポートしてきた経験があります。
クリニックに最適なアドバイスを提供し、スムーズな指導対応をお手伝いします。

お問い合わせをお待ちしております。